活動報告2019

Dr.山本が運営する疫学研究グループは、腎臓病のみならず生活習慣病の予防戦略の構築するために必要な疫学研究を推進し、医学+統計学+情報工学を融合した疫学を通じて、社会に役立つエビデンスを発信しています。また、「若手腎臓内科医のための臨床研究セミナー」等を通じて、若手研究者の育成にも積極的に取り組んでいます。

1. こんな研究をやっています

腎臓病および生活習慣病の発症予防・進行抑制につながる疫学研究を行なっています。2018年より大阪府民900万人のレセプトデータを利用したTOKIプロジェクトを立ち上げ、ビッグデータを活用した疫学研究が進行中です。

1.1. 大阪大学の職員健診受診者を対象にした後ろ向きコホート研究

大阪大学の職員健診受診者約2万人を対象にする本研究は、主に20〜40歳台の若い世代において、生活習慣が腎臓病や生活習慣病に及ぼす影響を評価しています。本研究は、≦5時間の短時間睡眠が蛋白尿のリスクであることを、世界で初めて報告したコホート研究です。2019年には、平日と休日の睡眠時間の差で定義された睡眠負債が大きいほど、蛋白尿の有病率が高いことを明らかにし、睡眠負債と腎臓病の密接な関連を報告しました

Model 1の補正因子: 健診実施年度
Model 2の補正因子:+年齢、性別、平日の睡眠時間
Model 3の補正因子:+喫煙習慣、BMI、収縮期血圧、尿潜血、eGFR、HDLコレステロール、中性脂肪、HbA1c

睡眠以外にも、様々な生活習慣が蛋白尿に及ぼす影響を評価し、腎臓に優しいライフスタイルを提案するためのエビデンスを蓄積しています。
・朝食・夕食の頻度(投稿準備中)
・野菜の好き嫌い(投稿準備中)
・座位の就業形態(投稿中)

腎臓病のみならず、生活習慣病の予防を目的にした疫学研究も行なっています。高血圧のリスクとして有名な飲酒ですが、特に肥満でない男性でそのリスクが大きく、断酒による高血圧予防効果が肥満でない男性でより期待できる示唆する結果を報告しました。

1.2 その他

大阪大学職員健診受診者のコホート研究以外にも様々なコホート研究を行なっており、腎臓病・生活習慣病の発症予防・進行抑制につながるエビデンスを作成しています。
・飲酒頻度と食塩感受性(投稿中)
・一次生ネフローゼ症候群患者のアウトカム発症率:日本ネフローゼ症候群コホート研究(JNCSS)(投稿中)

2. 若手研究者の育成にも積極的に取り組んでいます

疫学研究の手法を学ぶための勉強会として、Clinical Journal Club(CJC)と若手腎臓内科医のための臨床研究セミナー(Clinical Research seminar for Young Nephrologists: CRYN)を定期的に開催しています。興味がある方は、山本までご連絡下さい。

2.1. Clinical Journal Club

CJCは、2008年10月7日に始まった大学院生のための勉強会です。毎週火曜日午後(CJC off-line)および水曜日夜(CJC online)に開催しています。臨床研究・疫学研究の教科書の輪読会や疫学論文を批判的に吟味する抄読会を通じて、疫学研究の基礎と応用を学びます。最近では、共同研究者である医学系研究科看護学専攻の大学院生も定期的に参加しており、随分賑やかです。

2.2. 若手腎臓内科医のための臨床研究セミナー

2012年より年2回開催している若手腎臓内科医のための臨床研究セミナーを、2019年3月17日(第9回症例対照研究とロジスティック回帰モデル)と2019年8月4日(第10回コホート研究とCox比例ハザードモデル)に大阪大学医学部附属病院で開催しました。疫学研究の基本的な考え方を学ぶ講義と統計パッケージStataを使った実習で構成される初心者向けの疫学セミナーです。2020年も3月と8月に予定しています。

2.3. その他

医学科4年生を対象にした環境医学実習、医学科5年生を対象にした臨床実習を通じて、学生に疫学の基礎を楽しく学ぶ機会を提供しています。希望者には個別に研究指導も行なっています。2019年には医学科6年生の研究がHypertension Researchにアクセプトされました。